高山の今

2009年度「環境文化論・飛騨」2009年6月12-14日

高山の今 (洋画コース 福田 厚子)




高山市図書館のそばにある喫茶店兼理髪店のオーナーのお話(70~80代ぐらいの男性)

子供の頃、高山にサーカスが来て象を見るのが楽しみで走ってこの坂を下ったという。
市場が宮川の橋を渡って次の筋にあったが、今は観光客向けの土産物屋かスーパーしかない。高山は道路ができてからドーナツのように駅周辺より離れた場所の方が栄えているそう。ダムの工事建設があった頃は人が多く、理髪店を5件も経営し、喫茶店も息子に継がせようと思っていた。しかし今は人がいないので残った1件でほそぼそと営業している。以前は何人か雇っていたが、今は1人で両方している。息子に理容師免許もとらせていたが食べていけないので水商売をした。しかしこの不況が影響してそれもダメになり、今はホテルで働いている。6月は観光客が少ないせいで休みが多いという。ご本人は奥さんも亡くなられ、1人なのでほそぼそとなんとか生きていけるが息子さんの将来を心配している。私と話していると80代ぐらいの女性が「おはよう!」入って来て新聞紙に包んだ花を渡していた。又10分ぐらいすると70代ぐらいの女性が「今日は暑いね!」とまた新聞紙に包んだ花を渡していた。お2人とも3束持っていたのでまたどこかのお家に持って行かれるのだと想像した。これも一つの高齢者同士の心強い助け合いなのであろう。


中橋温泉(銭湯)
陣屋から中橋渡って左にある6人ぐらい入ればいっぱいになる小さな銭湯。番台の80代ぐらいの女性に「偶然前を通ったので何も持っていないのですが、タオルとか売っていますか?」と聞くと無料で“タオル・石鹸・シャンプーお使いくださいと”書いて置いてある。心使いがうれしい銭湯だった。お客さんは70~80代ぐらいの人ばかり。交代で番台に座っている老夫婦が亡くなったら、この銭湯もきっと無くなるだろう。


朝市
陣屋の真ん中の筋の餅、味噌を売ってる威勢の良い80代ぐらいの女性。
「息子が一生懸命作ってるから、美味しいから買って帰って」と必死。
山菜や花を売っている人と少し違うこの女性は、親子大家族で生計を立てているのだと思った。

   ◇   ◇   ◇

四方八方、山に囲まれ、厳しい自然環境の中、助け合いながらの生活があり、外の文化を積極的に取り入れながら伝統にこだわる。足らない美しさがある。
屋台組の伝統ある屋台を持ち続けて、屋台がキレイに見れるように町が造られ、皆が見てくれる事に結束している昔は百姓と町人の融合である今の高山祭を一度見てみたい。
それにしても町を散策しても子供を見かけない、空き家が目立つ、洗濯物が高齢者の衣服が多く感じた。駅の表裏のイメージが違い、裏は都会的で若い人口はこちらに集中しているのだろうと思うが、高山で感じたことは高齢者が多いということと、歴史はあるが、伝統工芸、観光業をもっと繁栄させる地元の若者が少なくなっているのではと、総務省のホームページで2009年政府人口統計で高山市の人口を調べてみた。人口96,231人中、15才以下14,189人、65才以上22,982人で子供より高齢者が多い。出生数832人に対して死亡917人、転入者2,420人に対して転出者2,824人が多いのは人口は減少して行く傾向がうかがえる。一般世帯数32,063世帯に対して高齢者夫婦世帯数3,125世帯、高齢独身世帯数2,268世帯と2~3人に1人は高齢者だけで暮らしている。高山市役所のホームページを見ると移住者を募っている。歴史と伝統工芸のある高山を維持するために、やはり今後の深刻な問題なのだと感じた。